「ティ、キ…」

つぶやくと、男はそうだと笑った。顔が溶けそうなくらい、うれしそうに。思わず頬が紅潮する。途端に、ラビが間に割って入った。

悠長に名前なんか呼んでどーするさ!
「あ(そうだラビがいた)」
「なんだよ眼帯少年、相変わらず落ち着きねぇな」
「相変わらずって何さ俺はアンタなんか知らねぇさ!」
「ラビ、ティキ・ミックさんだって」
「ミックさん?!」
ヨロシクネ!
何だそのいい笑顔!俺か?俺がおかしいんか?この状況に異議を唱える俺がおかしいんか?」

にこやかに片手を上げた男に、それでも律儀にヨロシクするかァッ!と突っ込んでいるラビを見ながら、はティキ、と口の中でもう一度つぶやいてみた。ざわり、と背が粟立つ。やっぱり、知らないはずだ、そのはずだ、何人かすらもわからない、はず



(あ、なんか変な汗出てきた)



知らない、そのはずなのに、どうしてこんなにも心臓が早鐘を打つ。

気持ち悪い。
顔をぬぐって、男を見上げる。



「わたし、を、」


喉がごくりと上下する。


「知ってるんですか」





男は一拍おいて微笑んだ。ひどくやわらかく。


ああ、どうしよう。
やっぱりおかしい


心臓が痛い。

身体がこわばり、思わず、じり、と後ずさる。





「どうした?」

不意にまったく違う方向から話しかけられて、は後ろを振り返った。ラビも男も同様に。

「どうかしたのか」
「せんせ」

ラビがひょいと小さく首をかしげた。
化学の担任だ。訝しげに此方を、正確には男を睨んでいる。ああ、そりゃそうだ。だってどう見たって男は生徒に絡んでいる変質者。
咄嗟に、どうもしません、そう言おうとが口を開いたとき、不意に、ラビがガッと手をつかんできた。

「え」

なに、と言うよりもはやく。

先生ェ変質者です捕まえてほしーさ!

「は?!」

叫ぶや否やラビはの手を握ったまま一気に駆け出した。背中に、なんだと、といきり立つ教師の声が聞こえる。ミックさんがまずい!すごい勢いで引っ張られながら後ろをようやく振り返ると、担任に腕を引っ張られ校内に引きずり込まれそうになっている男が見えた。ひどく戸惑った様子で。警察呼ぶぞと担任が喚いているのが聞こえる。警備がダダダと走ってきたのも見えた。


ああ!ミッククライシス!!


たとえ不審者でも!



「ラビ!アホ!」

腕を引っ張るラビの尻に罵倒と共に蹴りをいれると、うっさいさばーか!と子供じみた返答と共に更に加速された。




世界の終わりで
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ミックさんに合掌

(大笑い)

あー難産でした。

この連載のラビ落ち着きがないですね
ヒロインも一体何なのかわけがわからないよ