白昼夢って二度も同じものを見るものなのか 「説明」 「説明も何も…」 「せ つ め い す る さ !」 「(なんかやだこの人…)」 はかばんに荷物をつめながら、余計なことを口走ったことをほとほと後悔した。授業が終了した途端追及を再開したラビは、やたらにしつこい。しつこすぎる。 「わけわかんないさ、嬉しいってどういうことさ、意味わかんないさ」 「私も意味わかんないからラビにきいたんだって」 「俺にわかるわけないさ」 「よし、帰るわよ!」 「無視はなしさ」 鞄をもちあげ、さっさと廊下に出る。ぶつくさと文句を言いながらも、ラビが後ろについてきているのがわかった。そりゃ、だって説明できるものならしたい。出来ないから困っているというのに。 「痴漢は犯罪さ、」 「そっか」 真剣な顔で説いてくるラビに適当に相槌を打って、はふ、とまた左手を眺めた。あの悪夢。あの男。 あの感覚を、何と言えばいいのだろう。 説明なんて、出来ないのだ。 あの場で殴り倒してしまったあの男と、会えることはもう二度とないのだろうか この広い町、 時間だってばらばらだ 「とにかく警察行くさ!」 「行かないよ」 変にいきり立っているラビに突っ込みを入れながら、はじゃり、と校庭へ踏み出した。校門までの道のりは砂っぽい。軽く咳き込んでしまう。特に今日は風が強くて砂埃が校庭を走… 「…あ」 目を見開いた。 砂埃の向こうに見える校門 その脇。 心臓がまた、早鐘を打つ 「?」 横に並んだラビが不思議そうに顔を覗き込んできた。 「…なんで」 唇が乾く。 眉がぎゅうと寄る。 「やー、お嬢さん」 男はニコリと笑って片手を上げた。昨日のようなスーツでなくて白いワイシャツを崩し、頬は赤く腫れている(我ながら痛そうだ) は思わず一歩後ずさった。 驚いた。 「何さアンタ」 ラビが訝しげな様子での一歩前に出た。何かしらおかしな雰囲気に、とりあえず相手に喧嘩腰で望むことに決めたらしい(案外喧嘩っ早いのだ、この友人は)(ちょうど機嫌も悪かったようだし) 「あれ」 それでも男は大して気にした様子もなく、かわりに目を見開いてラビを見た。そうして少しの間まじまじと彼の顔を眺めると、ハハ、と笑う。 「なんだ、眼帯少年も居たのか」 「(眼帯少年?!)一体何さ、不審者は警備員につまみだされるから気をつけたほうが良いさ」 「なんだろ、そういう巡り合わせなのか、この時代は?」 「聞けよ」 男は一人納得したようにうなづいて、白髪少年やら蕎麦少年もいるのかね、と首をかしげた。全く要領を得ない。 「まぁ良いや。とりあえず、俺はそっちに用があってさぁ」 そっち、と言うのと一緒に、男はを指差した。思わず体がこわばる。ラビがキッと眉を吊り上げてを隠すようにしながら男をにらみつけた。 「不審者に用はないさ!」 「大丈夫だよ俺不審者じゃないから」 「不審さ!」 「え?いい男じゃん」 「関係ないさ!」 「…(どうしよう口はさめなくなっちゃったな)」 「おい!」 「!なに」 「お前、昨日の痴漢てもしかしてこいつさ?!」 「(痴漢…)うーん」 「痴漢てひどいなぁおい、俺は紳士だよ」 「犯罪者は黙っとくさ!」 不審者から犯罪者に格上げ(格下げ?)された男は、ひょい、と肩をすくめた。それから妙にうれしそうに笑うとへ手を伸ばす。 「名前、っていうんだ」 伸ばした手はラビに思い切り払われたけれど、男はやはり気にした様子もなくにこにこと頷いた。 「あのー…」 恐る恐るラビの後ろから男を覗き込んでみる。褐色の肌、今日は前髪がおりていて髪はぼっさぼさだ。その下には、はじめて気づいたけれど、金色の瞳。泣き黒子。形の良い目をきゅと細めて、男はなに?と首をかしげた。 「…あなた誰なんですか」 「不審者さ!」 「ちょっ、ラビごめんうるさい」 「!!(ガーン)」 耳元で大声を出したラビの横から男の前へとたつ。心臓は痛いけれど、でもそれ以上に知りたった。この男は一体何者なのか。 「俺?」 男は笑った。 「ティキ ティキ・ミック」 「ずっとおまえをさがしてた」 ああ、眩暈がする |
世界の終わりで夢をみる
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ラビほんとうるさい
多分そういうめぐり合わせの時代です
ティキ/ラビ連載だけど
他の子たちも出したいなー出せそうだったら!