高く低く細く儚く
ひどくうつくしいせんりつの






「泣いているのか…?ララ」

歌をとめ、少女は老人をみた。泣いている?試しに頬を触って見る。サラサラと乾いた感触、当然だ。

「変なこと聞くんだね、グゾル」

老人に微笑む。微笑むこと、笑うこと、喜ぶことが、彼女に許された感情なのに。人を幸せにするため

「何か……悲しんでいるように聴こえた…」

少女は目を細め、老人の顔を覗き込んだ。悲しんでいるのは

「私は人形だよ…?」

老人がうつむく。
人形はぺたりと座り込んだからだを老人にむけて、ねぇ、とささやいた。

「グゾル」

「どうして自分が人形だなんてウソついたの?」

フードにかくれた老人の表情は見えない。真暗、真暗だ。闇が広がる。
ようやくして、老人は口を開いた。

「私はとても…醜い人間だよ」

ひどく苦しそうに吐き出された声に、また具合が悪いのかと思わず手を伸ばしたけれど、そうではないようだった。苦しげに、つらそうに、老人は言う。

「ララを他人に壊されたくなかった」

わたしを

人形はじ、と老人を見つめた。

「ララ…ずっと側にいてくれ。そして私が死ぬ時、私の手で お前を壊させてくれ

老人が顔を上げ、人形を見つめ返す。苦しげに眉を寄せた老人の悲痛な声に、人形は今度こそ手を伸ばし、その身体に腕を回した。ぎゅ、と抱きしめる。

「はい、グゾル」

ほうら、私だってわかるの
悲しそうなのはあなた
だから私はあなたを抱きしめる
あなたのために歌うのよ

人形は回した手に力を込めてささやいた。

「私はグゾルのお人形だもの」

次は何の歌がいい?
頬を摺り寄せた人形に、老人は呟いた。

「私は醜い…醜い…人間…だ」

人形は微笑む。
いとしいひと
かなしいひと

わたしをこわすひと

しん、と静寂が耳を打つ。



そのとき不意に、
地を踏みしめる音が響いた。


「あ…ごめんなさい。立ち聞きするつもりはなかったんですけど…」

にんげん
いつの間に
人形の見つめる先に、二人の人間が立っていた。
あーやらしーんだーアレン!と声を上げた女を小さな方は無視し、人形に見入った。

「…キミが人形だったんですね」

その言葉に、つと立ち上がる。
あれは、にんげん
わたしをこわす

(私を殺すのは)

グゾルだけなのだから








かなしまないで いとしいひと

(ララとグゾルの痛々しいくらい健気な愛が好きで好きで)