「どわたっ!!?」 「ギャーッ!!」 人形を、見つけた それはいい それはいいんだけれども 「アレン!ちょっと!怒らせちゃったわよ!盗み聞きなんてするから!ハレンチ!」 「盗み聞きじゃないです立ち聞きです!」 「どっちでも良いんじゃないかな?!」 「よくないですあとハレンチじゃないです」 言ってる間にも、二人の足元に石柱が突き刺さる。エンが二人を背負ったままのけぞる。次々襲い来る石柱。 人形が、その細い腕でこちらへ飛ばしているのだ。 「ままま待って待って!!落ち着いて話しま…わっ!!!」 石柱に足場を崩されて、アレンは思い切り飛ぶ。人形の表情は硬く、ひどく冷たい目でこちらを見ている。何かに怒っている?否、おびえているような。 「…聞いてくれそうにないな」 両手がふさがっているためにギャーギャーと叫びながら逃げ回るだけのエンを見やって、アレンは部屋を見回した。部屋、というよりもずいぶん開けた講堂、広場と言ったほうが近いその場所の中心に、人形と老人がいる。そのまわりを、ぐるりと並んだ石柱をみて、アレンはエンに鋭く叫んだ。 「エン、壁に寄って伏せてください!」 「えっなに?!」 「壁に寄って、伏せて…」 「えっなに?!!」 「耳悪いな!もういいです伏せて!伏せてください!」 「(ふせ?!)!アイサー!」 ようやく気づいたらしいエンが答えると背負った二人を降ろし、その上にかぶさった。う、重い、とうめき声があがったような気がしたけれど、まぁ、良しとする。 アレンは短く息をはいて、左手のイノセンスを解放した。一気に巨大化した手で、人形が飛ばした石柱を受け止める。 「!」 はじめて焦りを浮かべた人形に微笑んで、それを勢いをつけて投げ返す。 「それっ!!」 ギュオと回転した石柱はまっすぐに人形へ飛ぶ。けれど、思わず腕で頭を庇った人形の頭上をそのまま跳び越し、それは背後、左右に並んだ石柱を次々と破壊した。 「え!?」 石柱を、と目を見開いた人形の横を飛んで、ブーメランのように戻ってきた石柱をアレンの左手が受け止める。巨大なソレを身体の横につき立て、アレンは人形に微笑みかけた。 「もう投げるものはないですよ」 人形の肩がびくりと跳ねたのに気づいて、アレンは笑みを濃くした。そうだ、怯えているだけなのだ。頭を下げて、アレンは精一杯の笑顔を浮かべた。 「お願いです。何か事情があるなら教えてください」 肩をすくめ、おどけてみせる。 「可愛いコ相手に戦えませんよ」 人形の顔が、はじめてやわらいだ。まだ、幼さを遺す少女の姿をした彼女の目元が緩む。アレンは安心し、ともかくも石柱をそばにゆっくりと横に倒そうと身をかがめた、途端、 「あ、アレン、可愛いコって!」 「…(あ、無事だった)」 瓦礫の中からエンがよろよろと姿を現した。背負った二人も無事のようだ。一応心配になって、そばによる。 「大丈夫ですか?」 「うん、へいき。アレンは?」 「大丈夫です」 「うん、そっか、だよね」 あはは、と不自然に笑うエンに眉を寄せると、エンは意味ありげに顔をゆがめた。 「よっ、このイギリス人!」 「意味がわかりません」 「可愛いコ相手には、戦えません!」 「なんですか!」 うすらと赤くなったアレンを指差してキャーというエンの足元に、アレンは無言で石柱を突き立ててやった。元気だよこの人!(心配して損した!) |