と二人での任務が終わり、教団に戻ってきて数日の昼だった。ギャーという悲鳴に続いてすすり泣きまで聞こえてきたものだから、アレンは手に抱えていた食料をうっかり落としそうになり、その部屋の前で足を止めた。キッチリと閉められた戸。神田の部屋だ。アレンの眉が寄る。なんでこの中から悲鳴が。神田のものなら理由が何であろうといい気味だと思うところだけれどこれは違う。再び「ギョー!!」と奇声がその部屋から聞こえてきて、アレンは恐る恐ると戸に近づいた。の声だ。中で一体何が。
試しに戸を一回開けて見た。異世界だった。閉めた。もう一度開けて見た。中の景色は変わっていない、ということはこれは幻覚じゃないのだろう。なんてことだ。

「ごめんなさい、ごめんなさいごめんなさい」

念仏のようにごめんなさいと唱えながらしゃくりあげているのはだ。正座している。の目の前の床には刀傷のような穴が無数空いている。悲鳴はこのせいか。

「ごめんなさいごめんなさい、悪かったさ、ごめんなさい」

隣で同じように唱えながら正座しているのはラビだった。二人とも頭をたれ、ひたすら「ごめんなさい」と唱え続けている。アレンはそろ、とその二人から目線を上げた。神田が居た。腕を組んで仁王立ちしている。まぁ、それはいい。問題は彼の頭だ。(弱いとか悪いとかそういう話じゃないそれは元からだ)

「ごめんなさいごめんなさい」
「調子乗ってすいませんでした、弾けてすいませんでした」
「やだラビ、今一番弾けてるのは神田の頭よ」
「あ、そっかじゃあ弾けさせてすいませんでした」

瞬時に六幻がラビの膝のすぐそばに刺さる。ヒィと悲鳴を上げてラビがのけぞった。の顔も一気に青くなる。

「テメェら…ッ」
「おっ、怒んないで神田!」

地獄から響いているかのような声と共にを睨んだ神田に、彼女は慌てて両手を胸の前で振った。

「大丈夫、結構似合うわよアフロも!」
「そ、そうさユウ、アフロでユウも陰鬱な感じから一気に陽気になったさ!」
「モテるわよ神田!」
「モテモテさユウ!」

「死ねよ」
「ギャー!!!」

刀から現れた蟲に攻撃され、二人が床にバッタリと倒れる。怒りで顔をゆがませた神田の頭が、ユサユサと揺れた。そう、ユサユサと。

アレンは何度も目をこすった。夢ではないようだ。


神田が、アフロに。


「だってしょうがないの、私たちのせいじゃないのよユウ、あ、いっけね、神田!」

神田に一睨みされては慌てて言い直した。

「そうさコムイが新薬の実験したいって言ってたから!」
「ちなみにおじいちゃん(ブックマン)に頼まれて作った育毛剤らしいわよ!」
「俺の愛すべき(ゲロ)じじいのためにこりゃ実験しなきゃなんねぇと思ってさ!」
「ちなみにラビがおじいちゃん(ブックマン)あの歳で色づきやがってペッペ!って言ってたら本人が目の前に居てびっくりしたよ!(余談)」
「育毛剤でなんでアレだ、ソレだ、コレだ、えー、こう、こうなる!!」
「ユウ、怖がらなくて良いさ、言ってみ。ア フ ロ」
「アフロよ、神田。ア フ ロ。リピートアフターミー」
「死んでも言うか!つーかお前らが死ね、頼むから死ね!」

神田が再び刀を一振りし、蟲がラビとを襲う。ギャーとまた悲鳴を上げて倒れてから、はよろよろと身を起こし、今度はごめんね?と媚びた笑顔を浮かべた。

「誰にも言わないから!絶対秘密にするから!(コムイとおじいちゃんはもう知ってるけどね!)」
「そういう問題じゃねぇ今すぐ戻せ」
「それがコムイも連夜に及ぶ徹夜の結果予想外の薬になっちまったそうで、もっかい一から薬作んなきゃいけねっていうかさぁ」
「少なくともあと三日はしないとコムイの手も空かないっていうかさぁ」
「殺していいか…?」
「神田!」

肩をプルプルと震わせ俯いた神田に、がひし、と抱きついた。急展開だ。

「怒って当然よね、そうよね、当たり前よね…ごめんなさい」

言いながら、神田の胸に顔をうずめる。肩が微かに揺れた。驚いたらしい神田はを見下ろして片手をオタオタと宙に浮かせている。すると、今度はラビがユウ!と神田の胸にすがった。気持ちが悪い。

「悪かったさ、ユウ…俺らがいけねぇよな、まさか育毛剤がこんな結果になるなんて…思ってもいなかったから…」
「いやそこじゃねぇだろいやそれもあるけどなんで俺を実験台にしたかっつー」
「神田!!」

神田のつっこみを、がさえぎる。

「…ごめんね…ッ」
「……ほんとに、悪かったさ…ッ」

二人の声はかすれ、震えていた。神田は眉を寄せ自分の胸に顔をうずめた二人を見下ろした。

「お前ら…」
「…神田」
「ユウ…」
「ごめんね、私なんかもう頭という頭がアフロになっちゃえばいいよね、私たち、アフロになった人の気持ちなんか考えてなかったよね…」
「ごめんな、俺後さき考えなくて。自分だって、この眼帯!とか言われたら結構がっつり凹むのに、眼帯の奴の気持ちはわかっても、アフロになった奴の気持ちなんて、わかってなかったよな…」
「神田だって、アフロなんか嫌だよね、どんなに、どんなに男らしい神田でも、アフロには怒髪、天を突くよね」
「いくらユウの心が海のように広く、深くても、アフロはねぇよな、アフロは…」
「い、いや…」
「ごめんね、神田…ッ」
「ほんと悪かったさ、ユウ…ッ」

二人の掠れ萎れた声を聞いて、神田は幾許か考えをめぐらしたらしく、その末、大きくため息をついた。

「…俺も、油断してたからな…」
「…神田?」
「二度目はねぇぞ?!」
「うん…うん!ごめん、ごめんね!」
「いや……ア…アフロ?っつーのも…」

まぁ、一度くらい経験しといても悪かないかも、な…

言い放った神田のアホ面を、アレンは一生忘れないと思った。
が一際強く神田の胸へ顔を押し付ける。その肩が本格的に震えているのをみて、神田は宙に浮かせたままだった手を、ようやく彼女の背中に寄せた。


アレンはその一部始終を見守ってから、ゆっくりと戸を閉じた。一拍置いて、ラビとがとうとうプフゥッと噴出したのが聞こえたので、さっさと神田の部屋の前から退いた。案の定、部屋の中からすぐに、世にも恐ろしい怒声と破壊音が聞こえてくる。

あの二人には良い薬になるかもしれない。

思って、早速このネタを誰かに言いまわさなくてはとアレンは手に持った食料もそのままに、食堂へ戻っていった。

さて本物の悪はどこだ。








はいここに

こんなもん書いて、あれですよ、
ミウさんのあの目も眩むばかりの素敵ときめき夢のお礼にしようと、してるんですよ
悪っていうかアホです誰か罰してください。
これでも、ミウさんへの愛は…ッ、愛は…ッ!!
大好きです!愛でカバーできてないですが、どうか許してください!大好きです!
こんなものですが、よろしかったらお納めください…ッ

グリコ
moa
1.31


ミウさんの素敵サイトさま!
夢、みれます!本当に、夢、みれます!