さむい、と呟いてが白い息を吐いた。 マフラーを巻いてやると団服を脱いで此方の肩にかけてくる。それじゃ意味が無い。団服を付き返すと更に返してきた。いらんって。 「今日はおつかれー」 結局元通りは団服を、ラビはマフラーを巻いて座り込むとが言った。おう、と頷いて鼻先をマフラーにうずめた。教団の天辺はその高度の為かひどく風が強い。寒い。洒落んならん。それなのに中に戻らないのは、が教団中で指名手配されているから、だけではない、のだ。 (俺的にはね) 「面白かったわねー、クリスマス」 風でぼさぼさに髪が吹き上げられているのにもかかわらずが楽しそうに言った。 「まー久しぶりに良く暴れたもんさー」 「ジェリーがあんなに怒り狂うのはじめてみたわー」 「が小麦粉思い切りぶちまけたうえオーブン焦がしたせいさ」 「料理ってある種の魔法よね!」 「(アレン…)」 「神田ツリーが完成しなかったのだけが心残りだなー」 「ユウのあのポニーテール、良い枝振りだったのになぁ」 「部屋まで追っかけてくるなんてしつこいわよね」 破壊されつくした自分の部屋を思ったのかが一瞬顔をしかめる、が、すぐに口の端がきゅっと上がた。たのしかった、ともう一度囁く様にラビも思わず微笑んだ。最初クリスマスを盛り上げるから付き合ってと言われたときは何のことかと首をかしげたけれど、これだけ喜んでくれたのならトナカイ冥利につきるというものだ。 「そういや俺クリスマスって祝ったの、はじめてさー」 空を見上げ言うと、もわたしも、と頷いた。 「だから勝手がいまいちわかんなかったんだけど…」 ケーキとサンタとクリスマスツリーと、と指を折る。 「まぁ、ポイントはおさえてたわよね」 「グッジョブさ」 「ラビ、ありがとね」 「いやいやなんのなんの」 が笑う。ああ、良かった。トナカイやってよかった。正直神が生まれた日なんて自分には関係ないなんて思っていたのだけど。 「でもなんで急にクリスマスさ?」 「んー」 がほぅ、と息を吐く。 「アレンの、元気がなかったから、」 「……」 へぇ、と呟いた自分の声が一オクターブくらい下がったのがわかった。いかんいかん。 (いやでもちょっと凹むさ) うなだれると、っていうのと、とが続けた。見上げたは両手で口を覆って目を細めている。 「クリスマスを楽しくしたかったの」 私にとって、結構高いハードルなのよね、今日って。 「…へぇ」 まっすぐと夜空を見上げるの横顔を見て、それしか言えなかった。こういうときに自分は弱いな、と思う。深く入り込むことができない。人の内面に、深く入っていくことに歯止めがかかる。深く入ってしまっては抜けられなくなる性分だと、おそらく自分でもわかっているのだ。深く、入り込んではいけない。 「でも、楽しかった、クリスマス。もうこわくない」 は言って立ちあがった。みてラビ、星に手が届きそう! の伸ばした手の先を見る。 (届かないさ) 星にも、の指先にも。 きっと届かない。届いてはいけない。一人の人間に、深く入り込んではいけない。わかっているのに。 ラビを見下ろしたが一瞬目を丸めて、噴出した。 「ラビ、鼻真っ赤!」 ほんとにトナカイみたいじゃない。笑うの鼻だって十分真っ赤なのに。無言で立ち上がると怒ったの、と笑うの頭をマフラーでぐるぐる巻きにしてやった。顔ももちろん。前が見えないと騒ぐにひっそり微笑んで、軽く口付ける。マフラーのさらりとした感触。ああ、これで十分だ! 「ここにいやがったか…ッ!」 「あれ、ユウ」 「神田?!」 足元から聞こえた声にラビが首をかしげると、マフラーの間からが顔を覗かせ声を上げた。ギラリと瞳を不穏に光らせた神田の横からすぐにぴょこんと白髪も飛び出た。見つかったか。窓から精一杯身を乗り出しながらアレンが手招きをする。 「神田邪魔です。、ラビも、コムイさんが探してますよ!」 「てめぇが邪魔だどけモヤシ」 「モヤシじゃありません、アレンです、人の名前も覚えられないほどかわいそうな脳みそしてるんですか」 「やんのかてめぇ!!」 「望むところですよ(胃もたれだって何のその!)」 一触即発の空気に、の、ケンカするなら拳でね!という能天気な声が響く。 あっという間に騒がしくなった塔の上で、ラビは小さく肩をすくめた。ああ、いつもの調子だ。振り返ったが嬉しそうに微笑んだ。 とりあえずは、君が笑ってくれるなら |
あれ?なにこのまとめ…?みたいな
最後に神田とアレンを出そうとしたら予想外の展開になってしまいました。
一番甘い仕上がりになっちゃいましたラビ夢
ラビって本当に健康的な男の子!なイメージなので
絡ませやすいんですよね
クリスマスはとうに終わってしまいましたが、とりあえず
メリークリスマス!!